モノを売る場合は売上を一括であげればよいのですが、コースでサービスを提供する場合は注意が必要です。例えばエステティックや美容クリニック、トレーニングジムでもコースで販売することはあると思います。
今はサブスクリプションが流行っていますが、英会話スクールなどもコースで販売していますね。
例えば脱毛やダイエットの役務を、10回施術を受けないと効果が出ないとのことで、10回で30万のコースを販売するとします。
月に10件売れると300万円の現金が手に入ります。12か月で3600万です。
費用は仮に家賃が年間で1000万、人件費が2000万かかったとします。利益は600万円で、その利益に税金がかかってきます。
売上 | 経費 | 損益 |
---|---|---|
3,600万 | 3,000万 | 600万 |
しかし、お客様全員が10回のサービスを終わっていない場合、例えば期末に会員のコースの消化率が50%だったとします。
売上3600万で現金も3600万円入ってきていますが、1800万円分のサービスをまだ提供していないことになります。
その場合は経理処理として1800万円は前受金(負債)とし、売上から差し引くことになります。
売上1800万円、家賃1000万円、人件費2000万円だとしたら、1200万円の赤字となります。
売上 | 経費 | 損益 |
---|---|---|
1,800万 | 3,000万 | ▲1,200万 |
上の2つの例は同じ数字なのに経理処理によって黒字にも赤字にもなってくる例です。
正しい経理処理は後者になります。売上が少なくなったり、赤字になることは対銀行などの評価も悪くなりますので、抵抗を感じる方が多いかもしれません。
開業当初は役務の残は増えていき、一定期間経過すると役務残は安定してくることが一般的です。(コース消化の平均期間や売り上げの伸び方によります)
これは手元にキャッシュがあるのに、税金が少なくなるという開業初期にはありがたいメリットとも言えます。
しかし手元にキャッシュがあるからといって広告費や設備投資として使用するのは危険です。
これは中途解約(キャンセル)があれば返金しなければならないお金なので、役務残(負債)額とバランスしていると安心です。
中途解約について特商法の観点から見ていく
エステや学習塾に中途解約があるのは分かりますが、医療行為に「解約」って概念あるの?って思いますが、2017年に美容医療が特定継続的役務に指定されました。
特定継続的役務とは「長期・継続的な役務の提供と、これに対する高額の対価を約する取引」のことです。
特定商取引法は、事業者が特定継続的役務提供について契約する場合には、概要書面を渡さなくてはなりません。
「概要書面」の記載事項
- 事業者の氏名(名称)、住所、電話番号、法人ならば代表者の氏名
- 役務の内容
- 購入が必要な商品がある場合にはその商品名、種類、数量
- 役務の対価(権利の販売価格)そのほか支払わなければならない金銭の概算額
- 上記の金銭の支払い時期、方法
- 役務の提供期間
- クーリング・オフに関する事項
- 中途解約に関する事項
- 割賦販売法に基づく抗弁権の接続に関する事項
- 前受金の保全に関する事項
- 特約があるときには、その内容
ここにクーリングオフや中途解約についての項目があります。お客様からの解約については応じなければなりません。
例えば10回コースを30万円販売したとします。お客様が4回施術を受けた後に解約申し出があれば、30万÷10×6で18万円のコース代の返金になります。
解約の金額の計算で注意があります。
例えば
3回コース…12万円
10回コース…30万円
2種類のコースを販売していたとします。多く契約してくれた方がお得ですよ!という場合です。
10回コース30万円を購入したお客様が3回消化したところで解約の申し出があった場合、30万÷10×3で9万円を請求できます。
この場合にうちの3回コースは12万円なのだから、12万円を請求するということはできませんので、注意してください。