起業

株式会社設立には募集設立と発起設立とがありますが、設立の多くは発起設立になります。
今回は株式会社発起設立についての「出資の履行による会社財産の形成と株主の確定」について解説致します。

■株式会社の発起設立の手順
1.商号の調査・決定 会社実印の発注
2.目的の調査・決定
3.定款の作成
4.定款の認証
5.株式発行事項の決定と引き受け
6.出資の履行による会社財産の形成と株主の確定 ←今日はここの話
7.機関(取締役など)の決定
8.法務局へ登記

出資の履行

【会社法31条1項】は「発起人は、設立時発行株式の引き受け後遅滞なく、その引き受けた設立時発行株式につき、その出資に係る金銭の全額を払い込まなければならない。」となっています。以下は出資の手順になります。

  1. まず発起人の中から代表者を1人決めます。
  2. 代表者の口座へ発起人それぞれが払込金を振り込みします。(代表者は自分の通帳でも振り込みにして名前が出るようにするとよいでしょう。)
    ※銀行名や口座名義が分かれば、取引明細票、取引履歴照会票、インターネットバンキング等の取引状況に関する画面をプリントしたものを添付しても構いません。
  3. 代表者名義の口座に発起人全員から振込があったことがわかる通帳部分をコピーします。
  4. 払込みのあったことを証する書面を記載します。
  5. 払込証明書と通帳のコピーをホッチキスで綴じて会社実印で契印します。

■証明書の例

証明書
当会社の設立時発行株式については以下のとおり,全額の払込みがあったことを証明します。

設立時発行株式数 ○○株
払込みを受けた金額 金○○円

令和○年○月○日
○○商事株式会社
設立時代表取締役 ○○○○ ㊞
※ここには会社実印を押印します。

資本金の額の計上に関する設立時代表取締役の証明書

設立に際して出資される財産に金銭以外の財産がある場合は,資本金の額の計上に関する証明書の添付が必要です。

資本金の額の計上に関する証明書
① 払込みを受けた金銭の額(会社計算規則第43条第1項第1号)
金○○円
② 給付を受けた金銭以外の財産の給付があった日における当該財産の価額
(会社計算規則第43条第1項第2号)
金○○円
③ ①+②
金○○円
資本金の額○○円は,会社法第445条及び会社計算規則第43条の規定に従ってされたことに相違ないことを証明する。

令和○年○月○日
○県○市○町○丁目○番○号
○○商事株式会社
代表取締役 ○○ ○○ ㊞

仮装払込みとは

〇預合い
発起人が銀行等払込取扱機関から借入れをして、それを払込にあてるが、この借入を返済するまでは預金が引出せない約束をしている場合。
→出資金が使えないと意味をなさないので、払込として無効であり、罰則も規定されています。

〇見せ金
発起人が第三者から借り入れた金銭を払込にあて、会社を成立させた後に返済してしまうこと。
→預合いと同様に無効となります。

まとめ

昔は資本金の下限の定めがありましたが、現在は撤廃され、資本金が1円でも会社を設立することが可能になりました。
もちろん1円では営業活動や仕入れはできませんから、その場合は役員借入金などで経営することになります。
しかし、資本金が多いということは、それだけ出資者がリスクを取っていることになります。
日本政策金融公庫の創業融資審査でも自己資金の額は見られますし、一般建設業許可申請では財産要件で自己資本500万円という項目があります。
資本金は会社の信頼をはかる指標となりますので、ある程度の資金は準備してから設立することが望ましいかと思います。