起業

株式会社設立には募集設立と発起設立とがありますが、設立の多くは発起設立になります。
今回は株式会社発起設立についての「定款の作成」について解説致します。

■株式会社の発起設立の手順
1.商号の調査・決定
2.目的の調査・決定
3.定款の作成 ←今日はここの話
4.定款の認証
5.株式発行事項の決定と引き受け
6.出資の履行による会社財産の形成と株主の確定
7.機関(取締役など)の決定
8.法務局へ登記

定款の作成

■定款の記載事項
株式会社の定款に書かなければならないこと(絶対的記載事項)は以下の5つです。
①目的
②商号
③本店の所在地
④設立に際して出資される財産の価格
⑤発起人の名称、住所

通常は上の5つでは足りず、以下のように記載します。
①総則(目的・照合・本店所在地)
②株式(発行可能株式総数・株式の譲渡制限・相続人等に対する売渡請求)
③株主総会(招集や決議の方法、議事録について)
④執行機関(取締役について)
⑤監査機関(監査役等を置いた場合)
⑥計算(事業年度・剰余金の配当)
⑦付則(設立に際して出資される財産の最低額、発起人の氏名など)

定款をシンプルにしたいとのことで絶対的記載事項(書かなければならないこと)のみで作成しようとする方もいらっしゃいます。
株主総会や取締役会など会社法に規定されていますので、書かなければ会社法のとおりとなりますが、うちの会社どういう決まりだったかなと調べるときに会社法を調べるより定款を見る方が楽なので、会社の取扱説明書だと思って、面倒がらず記載しておくことをお勧めします。

注意点

■資本金の額は、1円、または1千万円以上は避けた方がよいです。

・資本金が1円だと、鉛筆1本買っただけで債務超過になってしまいます。後で増資するにも費用がかかりますので、ある程度の資金を用意したほうが良いかと思います。

・会社設立後、2年間は消費税の免税事業者となりますが、資本金が1千万円を超えた時点で課税事業者となっていましますので注意してください。

定款の例

○○商事株式会社定款

第1章 総 則
(商号)
第1条 当会社は,○○商事株式会社と称する。

会社法では同一所在地での同一商号が不可となります。同一所在地でなければ大丈夫ですが、会社法でなく、不正競争防止法や商標法に関わってきますので、似た名前を使うのは避けましょう。
(商号の決め方についてはこちらのページで説明しています)

(目的)
第2条 当会社は,次の事業を営むことを目的とする。
1 ○○の製造販売
2 ○○の売買
3 前各号に附帯する一切の事業

目的は同じ業種の謄本を見てみるのが参考になります。ベンチマークしている会社があれば見てみましょう。あまり多くしないほうがいいですが、将来営む事業も視野に入れて記載します。
目的のポイントは「適法性」「営利性」「明確性」です。会社の目的は登記されますので、事前に法務局で確認をとることをお勧めいたします。
例)ボランティア活動とかは会社の目的にそぐわない恐れがあります。

(本店の所在地)
第3条 当会社は,本店を○県○市に置く。

「所在地」とは所在場所とは異なり、最小独立の行政区画です。例えば「東京都渋谷区」です。この書き方だと渋谷区内の移転は定款変更になりません(定款変更は株主総会の決議が必要)。定款に番地まで記載することはできますが、隣に引っ越すだけでも株主総会が必要となってしまいます。

(公告の方法)
第4条 当会社の公告は,官報に掲載してする。

公告の方法は官報かWEBへの掲載が良いと思います。

第2章 株 式
(発行可能株式総数)
第5条 当会社の発行可能株式総数は,○○○株とする。
(株券の不発行)
第6条 当会社の発行する株式については,株券を発行しない。
(株式の譲渡制限)
第7条 当会社の株式を譲渡により取得するには,当会社の承認を受けなければならない。
(基準日)
第8条 当会社は、毎年3月末日の最終の株主名簿に記載又は記録された議決権を有する株主をもって、その事業年度に関する定時株主総会において権利を行使することができる株主とする。
2 前項のほか、必要があるときは、あらかじめ公告して、一定の日の最終の株主名簿に記載又は記録されている株主又は登録株式質権者をもって、その権利を行使することができる株主又は登録株式質権者とすることができる。
(株主の住所等の届出)
第9条 当会社の株主及び登録株式質権者又はそれらの法定代理人は、当会社所定の書式により、住所、氏名及び印鑑を当会社に届け出なければならない。
2 前項の届出事項を変更したときも、同様とする。

発行可能株式総数は、他の絶対的記載事項とは異なり、原子定款作成時に決まっていなくても大丈夫です。設立手続きの完了時までに定めることとなっています。
現在は定款に株券を発行する旨を定めない限り、株券不発行会社(株券を発行しない会社)となります。株券の不発行の条文を置かなくてもよいです。新しく設立するほとんどの会社は不発行会社です。

第3章 株主総会
(招集時期)
第10条 当会社の定時株主総会は、毎事業年度の終了後3か月以内に招集し、臨時株主総会は、必要がある場合に招集する。
(招集権者)
第11条 株主総会は、法令に別段の定めがある場合を除き、取締役が招集する。
(招集通知)
第12条 株主総会の招集通知は、当該株主総会で議決権を行使することができる株主に対し、会日の5日前までに発する。
(株主総会の議長)
第13条 株主総会の議長は、取締役がこれに当たる。
2 取締役に事故があるときは、当該株主総会で議長を選出する。
(株主総会の決議)
第14条 株主総会の決議は、法令又は定款に別段の定めがある場合を除き、出席した議決権を行使することができる株主の議決権の過半数をもって行う。
(議事録)
第15条 株主総会の議事については、開催の日時及び場所、出席した役員並びに議事の経過の要領及びその結果その他法務省令で定める事項を記載又は記録した議事録を作成し、議長及び出席した取締役がこれに署名若しくは記名押印又は電子署名をし、株主総会の日から10年間本店に備え置く。

株主総会の招集や決議方法は会社法どおりでよいでしょう。会社法より厳しく設定することは可能ですが、緩くすることは不可です。

第4章 取締役
(取締役の員数)
第16条 当会社の取締役は、1名以上とする。
(取締役の資格)
第17条 取締役は、当会社の株主の中から選任する。ただし、必要があるときは、株主以外の者から選任することを妨げない。
(取締役の選任)
第18条 取締役は、株主総会において、議決権を行使することができる株主の議決権の3分の1以上を有する株主が出席し、その議決権の過半数の決議によって選任する。
(取締役の任期)
第19条 取締役の任期は、選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。

取締役の員数は1名でも可能です。会社の状況に合わせてください。
非上場会社は取締役の資格を限定することができます。
選任決議方法は会社法どおりで良いかと存じます。
任期は上場会社では2年です。改選するのに決議や登記などお金と手間がかかるので、長め(10年)に設定するとよいかと思います。

第5章 計 算
(事業年度)
第20条 当会社の事業年度は、毎年4月1日から翌年3月末日までの年1期とする。
(剰余金の配当)
第21条 剰余金の配当は、毎事業年度末日現在の最終の株主名簿に記載又は記録された株主又は登録株式質権者に対して行う。
(配当の除斥期間)
第22条 剰余金の配当がその支払の提供の日から3年を経過しても受領されないときは、当会社は、その支払義務を免れるものとする。

第6章 附 則
(設立に際して出資される財産の最低額)
第23条 当会社の設立に際して出資される財産の最低額は,金○万円とする。
(最初の事業年度)
第24条 当会社の最初の事業年度は、当会社成立の日から平成○○年3月末日までとする。
(設立時取締役)
第25条 当会社の設立時取締役は、次のとおりである。
設立時取締役 ○○○○
(発起人の氏名ほか)
第26条 発起人の氏名、住所及び設立に際して割当てを受ける株式数並びに株式と引換えに払い込む金銭の額は、次のとおりである。
東京都○○区○町○丁目○番○号
発起人 ○○○○ 10株、金100万円
(法令の準拠)
第27条 この定款に規定のない事項は、全て会社法その他の法令に従う。

以上、○○株式会社設立のため、この定款を作成し、発起人が次に記名押印する。

令和○○年○○月○○日
(実印捨印)  発起人 ○○○○ (実印)

設立に関する内容は最後の附則に入れます。
発起人の住所・氏名は印鑑証明書の通りに記載します。

取締役会を設置する場合の例です。上記【第4章 取締役】と入れかえます。

第4章 取締役,監査役,代表取締役及び取締役会
(取締役会の設置)
第17条 当会社に取締役会を設置する。
(監査役の設置)
第18条 当会社に監査役を置く。
(取締役及び監査役の員数)
第19条 当会社の取締役は10名以内,監査役は2名以内とする。
(取締役及び監査役の選任)
第20条 当会社の取締役及び監査役は,株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の3分の1以上を有する株主が出席し,その議決権の過半数の決議によって選任する。
2 取締役の選任については,累積投票によらないものとする。
(取締役及び監査役の任期)
第21条 取締役の任期はその選任後2年以内,監査役の任期はその選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。
2 補欠又は増員により選任された取締役の任期は,前任者又は他の在任取締役の任期の残存期間と同一とする。
3 任期の満了前に退任した監査役の補欠として選任された監査役の任期は,退任した監査役の任期が満了すべき時までとする。
(取締役会の招集)
第22条 取締役会は,代表取締役社長がこれを招集するものとし,その通知は,各取締役及び各監査役に対して会日の3日前に発するものとする。ただし,緊急の必要があるときは,この期間を短縮することができる。
(代表取締役及び役付取締役)
第23条 当会社は,取締役会の決議により,取締役の中から代表取締役1名を定め,他に代表取締役を定めることができる。
2 代表取締役は社長とし,当会社を代表する。
3 代表取締役社長のほか,取締役会の決議により,取締役会長,取締役副会長,専務取締役及び常務取締役各若干名を定めることができる。
(業務執行)
第24条 代表取締役社長は,当会社の業務を執行し,専務取締役又は常務取締役は,代表取締役社長の業務の執行を補佐する。
2 代表取締役社長に事故があるときは,あらかじめ取締役会の定める順序に従い,他の取締役が代表取締役社長の業務を代行する。
(監査の範囲)
第25条 監査役の監査の範囲は,会計に関するものに限定する。
(報酬及び退職慰労金)
第26条 取締役及び監査役の報酬及び退職慰労金はそれぞれ株主総会の決議をもって定める。

まとめ

今回は単純な1人取締役で会社をつくる場合の例です。個人で会社を設立する場合は参考になるかと思います。会社が大きくなるにつれ、取締役が増えて、取締役会ができ、監査役や会計参与などを設置していくようになります。なお取締役会をおかない会社は全ての取締役が会社を代表しますが、代表取締役を選定して、その旨を定款に記載することもできます。