以前、コロナ対策の持続化給付金の実務を経済産業省から受託した社団法人が、そのまま電通に再委託したとニュースになりました。
「中抜きではないか」「税金の無駄遣いだ」などと批判されていましたね。
人材派遣でも同じようなことがあります。正社員を雇うとコストがかかるので、派遣社員を使い、スキルの身につかない業務に従事させたりします。派遣社員は仕事の幅が広がらず低賃金の派遣で働き続けざる負えなくなっていきます。
このように右から左に仕事を流しただけで手数料をとられてしまっては、最終的に仕事をする人が少ない金額で働くことになってしまいます。
もちろん大きな事業で、細かいニッチな作業がたくさんあるので、その部分を専門的な業者へ任せることはありえます。ここではいわゆる「丸投げ」と言われる「一括下請負」について説明致します。
一括下請負の禁止
■建設業での下請契約に関する規制
建設業では下請契約に関する規制として「一括下請負の禁止」をおいています。
【建設業法第22条】
1 建設業者は、その請け負った建設工事を、いかなる方法をもってするかを問わず、一括して他人に請け負わせてはならない。
2 建設業を営む者は、建設業者から当該建設業者の請け負った建設工事を一括して請け負ってはならない。
つまり仕事を全部やらせて、自分はお金だけ搾取している場合です。「一括下請負」は発注者の信頼を裏切り、中間搾取や労働条件の悪化といった建設業の健全性を阻害する恐れがあります。
仮に発注者が期待したとおりの良質な建設生産物ができたとしても、発注者の信頼を裏切ることに変わりはないため、建設業法違反となります。
ただし例外として、共同住宅を新築する建設工事以外の建設工事である場合、元請人が発注者の承諾を得たときは可能となります。※しかし公共工事では、一括下請負は全面的に禁止されています。
※条文の語句の注意
「建設業者」とは、建設業を営む者のうち、建設業許可を受けた者をいいます。
「建設業を営む者」には、建設業許可を受けていない者も含まれます
一括下請負にならない為に
■一括請負にあたらないためには「実質的に関与」していることが必要です
「実質的に関与」とは、元請負人が自ら施工計画の作成、工程管理、品質管理、安全管理、技術的指導等を行うことをいいます。
具体的には、
〇施工計画の作成
・施工計画書等の作成・修正
・施工要領書等の確認
〇工程管理
・進捗確認
・工程調整
〇品質管理
・施工報告の確認
・立会確認
〇安全管理
協議組織の設置・運営
〇技術的指導
・主任技術者の配置等法令遵守や職務遂行の確認
・実地の総括的技術指導
〇その他
・発注者等との協議・調整
・下請負人からの協議事項への判断・対応
・コスト管理
・近隣住民への説明
単に現場に監理技術者・主任技術者を置いているだけでは上記の事項を行ったことにはならないです。
また、現場に元請負人との間に直接的な雇用関係を有する適格な技術者が置かれない場合には、「実質的に関与」しているとはいえないことになりますので注意してください。
まとめ
建設業法では一括請負で請負わせた側はもちろん、請け負った側も違法になってしまいます。
例外で元請人が発注者の承諾を得たときは可能となりますが、下請け会社を管理・監督できておらず、工期の遅れも気が付かない、大きな瑕疵も把握できていないとなると如何でしょうか。
最終的には完成した建設物を使用する方が被害を受けてしまいます。
建設業法では、不当に安い金額や短い工期での請負契約も禁止されています。品質の低下が生じやすくなるため、やはり「丸投げ」はしない方がよいかと思われます。